12. and he falls asleep 2

 は、と短く息を吐くと同時に瞬きをしたら、ジュノン達はあの狂いそうな暗闇の中ではなく、閑散とした村の入り口にぼんやりと立っていた。着いたのか、とは、シャーレ以外の全員が思ったこと。ロニテスが素早くシャーレを見て、彼女は諦めたように息を吐いた。
「今のは私だけが使える転移空間……みたいなものでな。あの空間に私以外の誰かがいると、どうしてか私に“囚われる”らしいんだ。お前たちもそうだっただろ」
 原理がよくわからないので、私も原因はわからないんだが。彼女はそう続けると、けれどちゃんとたどり着いただろう、と、恨めしげにジュノンを見た。
「……ありがとう、シャーレ」
 だからジュノンは礼を言った。こうなった原因は、自分が「死なないために何ができるか」なんて話したからだと自覚していた。自分のある意味我ままのせいで、シャーレに負担をかけたことは間違いなかった。けれど彼女は小さく肩をすくめると、何でもなかったようにライフガントルに向き直った。
「それで、来たはいいが、この状況はどうするつもりだ?」
「予想外の展開だったな」
 ライフガントルは背中のシューをゆっくり背負いなおして、はあ、と思いため息をつく。言われている意味がよくわからなかったのは、ジュノンだけではなかったらしい。ロニテスが首をかしげたのを見て、ライフガントルが説明をする。
「ロニーはともかく、ジュノンが気づかないのは珍しいな。この村一帯に、強い三界力の力が漂ってる。村の様子も少し変だと思わないか」
 言われて、ジュノンは初めて何かが体にまとわりついているのに気がついた。それは、ジュノンが「三界力」や「気配」を感じる時にいつも起こる感覚だった。どうやら他のメディアスよりも気配に対する感覚が鋭いらしいジュノンは、いつも細い糸でくるくる巻かれているような感覚を持っていて、それを「気配の糸」と呼んでいた。それはヒトや能力によって全部違い、たとえばシャーレの持つ「気配の糸」はとても細くて鋭利だったり、ロニテスの持つ「糸」はやや太めで柔らかかったりする。けれど今感じている「糸」はそのどれとも違った。硬いロープのようなものがぐるぐると全身を巻きつけているような感じ、それだけで動けなくなるほどの強い力だった。
 けれどこれほどの力を、どうして言われるまで気付かなかったのだろう? その答えはシャーレがくれた。
「ああ、あの空間から出たすぐ後は、大体感覚が鈍るものなんだ。ライフは私の一番近くにいたから大して影響がなかったんだろう。ロニーやジュノンは間にライフを挟んでいたから、気づかなくても当然だろう」
「なるほどな。あの空間は徹底してお前中心にできてるってわけか」
 何てったって「神」だもんな、ぼそりと呟くようにライフガントルが続けて、ジュノンはふとあそこで感じた感覚を思い出した。「シャーレとつながっている」という感覚。不思議と心地よく、そして気持ちの悪い感覚。全身が麻痺したような感覚。シャーレはそれが与える影響を知っているのだろうか。苦々しげに表情をゆがめると、「そんなことはない」と低い声で返しただけだった。
「で、ジュノン。この気配をどう思う?」
「え? うーん、この感覚は地界力……に、近いかな。強すぎてよくわからない。地界力は特に、魔界力とも似てるから……」
 その言葉にシャーレが眉をひそめた。
「魔界力と地界力では、対処の仕様が変わってくるぞ。特定できないのか?」
「できなくはないけど、時間をかけて体に気配をなじませないと無理だよ。とっさには判断できない。多分、地界力だとは思うけど」
 ジュノンが困ったような顔でつづけるのを横目で見とめて、それからロニテスはまあなんにしろ、と口を開いた。「入ってみなきゃ分からねえんなら、入るしかねえだろ?」続けられた言葉はもっともだ。
「こっちは病人抱えて一刻を争ってんだ。なるべく自分の三界力を抑えて、この力の源に気付かれないよう動くしかねえんじゃねえか?」
 まずはシューを何とかしないと。ロニテスのはっきりした物言いに全員が頷きかけた。というのも、ジュノンが瞬間体を強張らせたからだ。彼は硬い顔つきをして、それから今にも進みだしそうな一行を見て、か細い声で付け足した。
「待って。もしかしたら、“限界解除”(アンリミット)状態になってるかもしれない」
 瞬間、全員の顔つきが変わる。
「“限界解除”……感情の高まりや精神状態によって自ら持つ力の上限を取っ払ってしまう、一種の暴走状態……厄介だな」
 ライフガントルが苦々しげに呟いて、ちらりとシャーレを見やる。視線が合うと、彼女はすぐさまその意味を理解したようで、それから少し視線をさまよわせた。基本的に常にまっすぐと相手を見返すシャーレが、こんな風に視線をさまよわせるのは珍しい。ジュノンは不安に思考を支配されながらも、酷く驚いて彼女の様子を眺めていた。
「……“限界解除”を取り押さえられるか、だろう? この三界力の量だと少し厳しいかもしれんが、五分くらいなら持たせられるだろう。だがライフ、それで何とか出来るのか?」
「五分か……厳しいな」
 二人の会話の意図を読み取ったロニテスも、難しい顔をしている。ジュノンは始め何の話をしているのかよくわからなかったが、ロニテスが「俺もシャーレの方に回るよ」と言ったことで、大体理解できた。
 つまり、いつ襲ってくるかもしれない“限界解除”状態にあるどこぞのメディアスに攻撃されぬよう、シャーレとロニテスが囮役に回り、件のメディアスの注目を引いている間にシューの治療のために何ができるか探る、ということらしい。しかしシューの状態は守人一族特有のかなり特殊な状態だ。たかだか五分十分で何とかできる内容ではない。
「この村にどんな病でも治せる医者がいるってんなら別だがな」
 ぽそりと呟いたライフガントルの言葉を聞いたのは、ジュノンだけだった。酷く悔しそうに唇をかみしめているライフガントルは、それでも、と続ける。
「やるしかないんだ。そうだろ? ジュノン。……“生きるために”、やるしかないんだ」
 しっかりとこちらを見たライフガントルは、力強い瞳でジュノンの不安げな姿を映していた。彼の言葉に、つい昨日の出来事を思い出す。
(……やるしか)
 ゆっくりと頷いて、頷き返されて、一同は一直線に並んだ。村の入り口は相変わらず色濃い地界力だか魔界力だかで覆い尽くされている。
「……行くぞ!」
 ライフガントルが低い声で呟いた、その瞬間だった。

「待て! 入るな!」

 強い制止の声と同時に、背後に別の気配が生まれる。否、おそらくあまりにも膨大な三界力のせいで隠されていたが、彼はこの周辺に先ほどからずっといたのだろう。ただ、ジュノン達が気付けなかっただけで。
(まだ、シャーレの世界の名残が残ってるのか……?)
 突如現れた、ように思える人影を見るため振り返って、ジュノンはぼんやりと考えた。でないと、気配に人一倍敏感なジュノンが気付けないわけがない。
「その村に入ってはならん。入ったら、地獄を見るぞ」
 そこに立っていたのは、初老の男だった。白髪を刈り上げ、がっしりとした体つきをしているその男は、よれよれのシャツの上から煤や泥でまみれ元の色がわからなくなったベストを着込み、同じく汚れまみれのこげ茶のズボンを穿いていた。衣服の様子や体つきから見ても、彼はこの村、ロコモラの鉱山で働く人間だろう。
 その彼が何故村の外にいるのか、何故村に入るなと制止したのか、少々不可解な状況に、全員が一瞬にして警戒態勢に入った。
「……警戒しなくてもいい。わしはロコモラ鉱山で働く、フォルトという者だ。悪いことは言わない、お前さんたちがどんなに腕っ節に自信があろうと、その村にだけは、入っちゃいけない」
 低い声で、ゆっくりと告げたフォルトと名乗った男は、それから静かに目を伏せた。その様子が言葉の信憑性を増す。けれど戸惑ったのはジュノンだけで、シャーレはもちろんロニテスやライフガントルも、一向に警戒を解かない。おどおどと三人の様子を眺めていると、ふと、シャーレと目が合った。彼女はジュノンの様子を見とめて、す、と目を細くした。その視線が呆れかえっているような、はたまた侮蔑にも似た冷たいものだったので、ジュノンは一瞬、状況を忘れかける。
「……俺達は、レイニータウンからきた。フォルトさん、なぜ、入っちゃいけないんだ?」
 ライフガントルが慎重に問うと、フォルトは目を伏せたまま一つうなって、それから変わらぬ低い声で続ける。
「……数週間前だ。村の持つ鉱山の入り口に、女児が捨てられていた。だが、うちの鉱山は特殊な鉱石を出すが故に、人体に有害なガスを出す。だからわしたちはマスクを使って作業をするが、女児はそうもいかんだろう。ほうっておくわけにいかず、女児を村に連れ帰った。その途端、女児の体が真っ赤に発光したかと思うと、村中に白い靄が立ち込めてしまった。最初は皆何事もなく過ごしていて、女児も変わりがなかったんだが、数日前、事情は変わった」
「その捨て子が、実はメディアスで、“限界解除”を起こした、って、そう言うことか?」
「そうだ。異変が現れたのは丁度一週間前。幻覚・幻聴の症状を起こす者が多発して、彼らはたいてい正気を失ったように何かに怯え、はたまた笑い続ける。村のもんは彼らをすぐさま隔離したが、あっという間に村中に幻覚・幻聴は広がっていった。わしはたまたま、その少し前からこの先にある街に出かけていたもんでそういう症状に見舞われることはなかったが、村の緊急を知らせる手紙の中に、はっきりと書いてあった。“白い靄が村を食いつくす。村に帰ってきてはいけない。もし来てしまっても、村に入ってはいけない”、とな」
 フォルトの言葉を聞き終えて、ロニテスが少し不思議そうな顔をした。
「どうしてすぐさま“白い靄”が原因で、その発生源が捨て子だってわかったんだ? 伝染病とか、そう言うものだって考えられただろう?」
「なんだ、知らんのか? ロコモラは、微弱だがメディアスとして生まれてきてしまったがために、他の町々から迫害されてきた者が集まって作った村。その能力はせいぜい湯を沸かせるくらいの火を出したり、バケツ一杯分の水を出したりといった程度だが、どの街でも迫害の対象と変わらない。だから皆一般人のふりをしているが、村の住人は皆メディアスだ。メディアスなら、ある程度同族の力の気配を嗅ぎ取ることができる。“そう言うもの”に敏感な奴がいてな、すぐに三界力だと気づいた」
 お前さんらもメディアスだろう、フォルトは続けると、にやりと意味深に笑った。けれどすぐさまそれは消え、だからな、と締めくくる。
「なるほどな。村ん中に入ったら幻覚作用にやられたメディアスどもに襲われるってわけか。性質が悪い」
 シャーレがいって苦々しげに舌打ちをした。彼女も、フォルトの言うことがうそではないと気づいたらしい。ジュノンはフォルトから感じるほんの僅かな三界力の気配に、これじゃ気付かないよなあ、と、内心苦笑する。と同時に、こんな僅かな、触れれば切れてしまいそうな三界力でも、人々にとっては「脅威」の対象になりえ、「迫害」の対象になるのかと思うと、そんな世界に絶望すら感じる。
(確かに、三界力は驚異的な力だけれど)
 でもそれは、欲しくて、望んで得た力ではない。その気持ちはジュノンだってフォルトだって同じだろう。力の差はあっても、一般人にとっての脅威であることに変わりはない。
「……そこの坊主は病人か? なるほどな、だから奇怪な術で急いで来た、というわけか」
 フォルトはシューを視認すると、目を細めて頷いた。どうやら彼は一番初めからジュノン達を眺めていたらしい。
「とりあえず、休む場所がないといかんだろう。今わしの住んでいる小屋に来るがいい。村の見張り小屋だが、こんな事態となった今、わしが勝手に使っているだけだがな」 
 苦笑いを浮かべたフォルトは、返事を聞く前に歩き出していた。ジュノン達は互いに恐る恐る顔を見合わせ、それから誰ともなく頷いた。


 小屋は見張り小屋と言うだけあって、質素な造りで生活するのに最低限の設備が備わっているだけのように感じた。一つしかない藁の敷かれたベッドにシューを乗せて、ジュノン達はとりあえず休息を得る。シャーレが相当消耗しているようだった。
「大丈夫か?」
「平気だ。一人旅の時はしょっちゅう使っていたからな、久しぶりだったのと人数が多かったので疲れただけだ」
 問いかけたライフにシャーレは素っ気なく答える。確かに一見そこまで疲れているわけではなさそうだったが、普段汗の一つもかかない彼女が、額を汗でうっすら湿らせているのを見てとると、やはり疲れているのだろう。
(無理もないよね、僕たち全員をたった一人で連れてきちゃったんだから……)
 ジュノンにはいまだ、シャーレ達の言う“アブソルタス・メディアス”がどんなものなのか知らない。古代語らしいそれを直訳すると“完全なメディアス”ということになるが、では“完全”とはどういうことなのか?
 しかし今やるべきは、そのことを問い詰めさらにシャーレを消耗させることではない。そのくらいの分別は、普段「無知」だ「おバカ」だ言われているジュノンにも理解できた。
「フォルト!!」
 一同がそれぞれの思案にふけっていた時、突然見張り小屋の扉が開いて、まだ幼い少女の声が響き渡った。呼ばれた当人はその声に体を震わせ、それから驚いて視線をやった。
 扉を開けはなって立っていたのは、六・七歳かと思われる少女だった。彼女は大きなブラウンの瞳をきっと吊り上げ、高い位置で結んだついンテールを揺らしながら、一番傍にいたライフガントルの腕をつかみとった。
「出てって!! フォルトに近づかないで!!」
 彼女は癇癪を起したように、自分よりも数倍大きいライフガントルを必死に立たせようとする。わけがわからないのはジュノン達もフォルトも同様のようで、フォルトは動揺したようでもあった。
「ちょ、ちょっと待て、待つんだ、アンナ!」
 アンナ、と呼ばれた少女は、フォルトの大声で動きを止める。その隙を狙ってフォルトがたたみかけるように続けた。
「この人たちは俺の客人だ! 村に入っちゃいないから、まだ幻覚にもかかっていない。病人がいるようなんだ、見てやってくれないか?」
 体格の良い男が幼い少女に頭を下げる図というのは、何とも奇妙なものだった。しかし二人にとってその位置関係はよくあるようで、少女は困ったように視線をシューのいるベッドに向けると、それからジュノン達を見回した。
「……ほんとに入ってない?」
「入ってないよ。入る前に、フォルトさんが止めてくれたんだ」
 未だ警戒したような様子で尋ねたアンナに、だから代表してジュノンが答えた。年齢も近いし、このメンバーで穏やかに話を進められるのはジュノンくらいだろう。人当たりがいいという点ではロニテスも当てはまるが、彼はやや短気なところがある。
「そう……ごめんなさい」
「いや」
 アンナはそう言ってライフガントルに頭を下げて、それからまっすぐにシューの元へ向かった。シューは今だ荒い呼吸を続けていて、必死に毒素と戦っているようだった。
 何をするのかと固唾を飲んで見守っていると、アンナはそっとシューの額に手を置いて、(シャーレがやった時と同じように)そっと目を閉じる。添えられた彼女の掌から何か暖かな光があふれ、光はシューの体に浸透していく。シャーレがすごいな、と呟いた。
「……この人、体の中に対処できない毒素を持ってる」
 アンナはぽつりと告げると、理由を求めるようにジュノンを見やる。説明役としてジュノンを選んだようだった。
「シューは、ロコモラのずっと向こうにあるレイニータウンで、守人として生活してきたんだ。守人は幻術を用いる一族なんだけど、それに必要な力が猛毒で、体内にもともと備わっている抵抗力を失うと、毒がまわっちゃうんだって」
 ジュノンはアンナにわかりやすいように(と、言い訳をつけているが、実際この程度しか理解できなかった)シューについて説明すると、悲しげにシューを見つめる。アンナは再び「そう」とだけ呟いて、それから再度目を閉じる。
「……だめ、毒素の進行を遅らせることはできるけど、この人、もう助からない」
 やがて諦めたように告げると、彼女はその手をそっと退かした。その言葉に、わかっていたこととはいえ全員がショックを受ける。ライフガントルが唇をかむのをロニテスは見た。
「……お、い……」
 その時だ。
 ふと、弱弱しい声がして、それまで意識を失っていたシューがゆっくりと目を開けた。変わらずびっしりと汗をかき、呼吸も荒いままだったが、それでもアンナが“治療”する前よりも気持ち生気が戻った顔つきで、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「すご、い、力、感じる……幻、覚、か?」
 一言一言、区切るように言った彼は、じっと視線をライフガントルにあわせていた。視線を受けたライフガントルが、気づいたように目を見開いた。
「まさか、お前っ……!」
「……相殺する気か」
 続きはシャーレが受け持った。
 はっとして、アンナ以外の全員がシューを見る。彼は弱り切っていて、けれどもランランとした瞳のまま、やらせろ、と、一言告げる。
「村の人、このままに……しておけ、ない」
 だから、やらせろ。
 はっきりと告げるシューに、誰も、何も言えなくなる。それで、と、低い声でライフガントルが呟いた。
「それで、お前は満足するのか?」
 問いかけにシューはゆっくりと頷く。微笑んでいるようでもあった。
「……わかった」
「ライフっ!?」
 やがて頷いたライフガントルに、ジュノンが信じられないと声を上げる。どうして、と、ジュノンの瞳は訴えている。
「これ以上、シューの力を使ったら……シューは死んじゃうんだよね? 死んじゃうんだよねぇ? なのに、何で……」
「……ジュノン」
 憐れむように呼びかけられて、けれどジュノンは泣きそうな顔のままシューをじっと見つめていた。ジュノン、と、今度はシューが呟いた。
「聞いた、だろう? 俺は、もう、死ぬんだ。たすから、ない。なら、何もせず死ぬより、誰かの、何かの、役に、立ち、たい」
 瞬間、ジュノンは顔を歪めた。気だるげに何とか持ち上げたシューの右手をとりながら、ジュノンはぽたぽたと涙をこぼす。雫はシューの掌に落ちて、やがて消えていく。
「……っ」
 大丈夫、大丈夫だから。声なき声でシューが語りかけてくるようで、切ない。ジュノンは頷いた。
「……と、いうわけだ。俺達はこれから、村の中に入っていく。“限界解除”は、力を使いきらない限り収まらない。今の状態でまだまだ力が有り余ってるってんなら、どんぱち起こして使いきらせる。その間に、シューが街を取り囲む幻覚作用を打ち消す」
「三分程度なら、幻覚に作用されないようにできる術を知っている。それまでに“限界解除”を起こしているメディアスを特定しろ」
 ライフガントルの言葉にシャーレが続いて、ジュノン、ロニテス、そしてシャーレ自身に術をかけていく。ライフガントルが己にかけられなかったことに戸惑いを見せて、それからシャーレはぶっきらぼうに言う。
「お前はシューの補佐だ。ハーフとはいえ、シューとお前は同じ力が作用しているはずだ。シューに力を分け与えるくらいはできるだろう」
「……わかった」
 シャーレの言葉にライフガントルは頷くと、それからフォルトに向き直った。
「そんなわけで、何人か村人を傷つけるかもしれねえが……」
「いや、構わん。それより坊主は本当に大丈夫なのか?」
「だ、いじょ、ぶ」
 シューが頷く。全員が決意を固めた。
「作戦、開始だ」
 ライフガントルが低い声で告げた。

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