やさし

 それが、やさしい罪でした。

 「ねずみ」を拒否した王様は、「青い少女」を受け入れて、不幸でも不変でも不滅でも絶対でもなくなりました。

 王様が自己の存在を求めたその瞬間、

 神の代わりに青い少女が赦したので、

 世界は一度、終わりました。




 だから我儘な物語が始まったのです。
 我儘な物語が始まったので、世界は不平等をやめました。




 けれど王様はそのことを知りません。




 王様は、本当ならば、

 意思を求めることも
 自己を求めることも
 あいを求めることも

 許されるはずがなく、それゆえに、絶対で、不滅で、不変で、不幸でなければならないのでした。
 そのおかげで世界はあって、それによって世界が保たれてきたからです。

 けれど王様はそれをやめてしまいました。

 青い少女が求めることを許してしまったので、
 王様はもはや王ではなくなったのです。




 「ねずみ」を拒否した王様は、「青い少女」の言うままに、「ねずみ」に呪いをかけました。
 少女のように王様に会いに来ることができた「ねずみ」は、王様にとってもういらないものなのでした。


 なので「ねずみ」は二十日間しか生きられません。
 あと、たった二十日間です。


 けれど「青い少女」のそのもくろみは、王様が壊れたことであっけなく終わってしまうのでした。
 少女が愛した王様は、
 少女がとりこんだ王様は、
 もはや王様ではなくなってしまったので(なぜならかれはもう絶対ではなかったので)
 あっというまに、ばらばらになって世界中に飛び散ってしまったのでした。




 むかしむかし ある世界に
 あるひとつの王国がありました
 王国には王様がいましたが、
 あるとき王様はいなくなってしまいました

 いまでは王様のいたお城で、
 青い少女が眠っています
 もう一度王様に会うために、
 青い少女が眠っています