視界が急に回ったと思ったら、王様はいつの間にか六つに分裂していました。
ばらばらになったのはなぜなのか、考えようとして、思考さえも七つに分裂していましたので、それはとうに無理なことでした。
けれどそれらはそれぞれに、どうしてこんなことになったのか考えました。
ひとつは、何も覚えていないことに気が付きました。
ひとつは、自分がなにかすぐに思いだして、それから、少女のことを考えました。
ひとつは、なんとなく思いだしたのですが、難しくてわからなかったので、考えることを諦めました。
ひとつは、王様だった頃といまの自分が混ざってしまって、しばらく混乱したままでした。
ひとつは、あっという間に思いだすと、思い出したことすら、あっという間に忘れてしまいました。
ひとつは、ゆっくり時間をかけて思いだしたので、ずっと、ずっと、心に留めておくことができました。
彼等は一瞬顔を見合わせて、それから、何事もなかったように世界中に散らばりました。
もう彼等は絶対という呪いに縛られることはありません。
自由に生き、歩き、進むことができました。
それはどんなにか素晴らしいことでしょう、事実、彼等はこれからできる素晴らしい体験に、もう夢中になっていたのです。
やがて彼等はそれぞれ少年の身体を得ると、降り立ったその地から、自分の居場所を求めて生き始めます。
かつて王様だった存在は、彼が守り続けた世界を犠牲に、我儘な物語を始めたのでした。
これからお話しするのは、そんな、悲しくて嬉しくて優しくて残酷な、六人の少年のお話です。
お話は「心臓」から始まります。
彼の元に、「鍵」をもつ「二十日ねずみ」がやってきてから――