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 ミイラ姿のフィリアンに連れられて、ジュノン・ロニテス・シャーレの三人は無理やり壇上へと立たされた。パーティ開始の合図にざわついていた生徒達が、突然現れた三人組に声を落とす。一体何だ、と言う彼らのひそひそ話が聞こえてきそうで、ジュノンは一度だけ、軽く目をつぶった。
「よぉ」
 ジュノン達が上がるとすぐに、ライフガントルがにやにやしながらやってきた。小声で自分たちに声をかけると、それきり、何も言わずに前を見据える。彼は衣装も着てなければ(当然のことだが)制服も着ていない。先ほどあったままの格好だった。
「パーティを始める前に、ちょいとお知らせがあるよ! なぁんと、ラ・ルーネに異例の留学生だぁ! 彼らはハロウィンの奇跡か否か、ソーレイルとは違うはるか遠いところから来たらしい。さあ、新しい仲間に挨拶をしてもらおうか!」
 ピエロは小指を立てて口元に置きながら、愉快そうにそう言った。小指に何か細工がしてあるのか、彼が小指に向かって話す度、会場中にその声が響く。ジュノン達の説明に生徒達が一層色目気だったのがわかった。ピエロがゆっくりとジュノン達を見回して、ふと、シャーレに視線を止めた。一人だけ仮装をしていたからだろうか。思う間もなく、彼は自身の小指を彼女に向けた。
「さあて、そこの美しいお嬢さん、トップバッターでどうぞ?」
 レディーファーストだよ、とも付け加えながら、ピエロはマスクの下で小さくウィンクをした。ちょっとだけ見える目元が見たことのある顔のような気がして、ジュノンは緩く頭を振る。シャーレがどう答えるのか気になる、無愛想な彼女のことだから、何かとんでもないことをやらかすのではないかと内心緊張していた。
「……留学生の……シャーレです。よろしく……」
 しかしジュノン達の予想に反して、シャーレは酷く淡々と、しかし嫌そうにそう言っただけだった。ピエロも彼女の返答にアテが外れたような顔をして、すぐさま小指をひっこめる。
「シャーレ嬢はシャイなのかな? ではでは、お次をどーうぞ」
 ピエロの言葉に会場の生徒達がくすくす笑い出す。ジュノンはシャーレがいつキレやしないかと心配だったが、「どーうぞ」と言って差し出された小指は、なぜか自分の目の前にあった。一瞬困惑して、ピエロの読めない表情を見る。……満面の笑顔で返された。
「え? えっと、僕? あー、うんと、留学生のジュノンです。魔術が使えるかどうかわからないんだけど、よろ、よろしくおねがいします?」
 早く答えて、と言うピエロの小声に従って口を開いたものだから、自分でも何を言っているのかよくわかっていなかった。ただ、ジュノンの自己紹介に会場の笑いが強くなったのだけはわかった。ピエロも満足したように頷いて、「女顔のジュノン君はこれでもれっきとした男の子〜」と歌うように付け足してから(そしてその禁句は混乱中のジュノンの耳にまで届かなかった)、ほい、と小指をロニテスへ。
「お次はそちらの男の子。あなたのお名前なんて―の?」
 リズムに乗って問いかけながら、ピエロがジュノンに見せたのと同じ笑顔でロニテスを見た。ロニテスは緊張のあまり、う、と一言詰まってから、酷くゆっくりとした動作で瞬きをする。次に瞳を開けた時、彼は意を決したように……見ようによってはまるで死を覚悟したかのような表情で、口を開いた。

「俺、ロニテス。よろしく」

 あまりに端的かつ低い声で告げられた紹介に(紹介と言うよりも一言だった)、笑いが起こっていた会場はしんとなった。笑っているのは愉快そうに「そうかい、そうかい」と続けたピエロだけで、彼はここに来て初めて声を立てて笑っていた。会場が静まり返った中、ピエロは構わずに小指を最後の一人――ライフガントルへと向ける。
「おやおや、こちらはずいぶん大きな留学生だねえ。君、本当に十代?」
「はは、面白いことを言うな、俺が留学生に見えるんなら光栄だ! ……俺はフォルティア・ルスター教授の助手として、お前達の授業を見てやるライフガントルだ。こいつらの保護者でもあるな。わかーくみえて、多分学園一の長寿だから、お前ら、俺のことを尊敬の意を込めて“賢者”と呼んでもいいぞ」
 からかうように促したピエロの声に続くように、ライフガントルもまた愉快そうな調子でそう言った。今までで最も長い自己紹介だけあって、彼が話す途中で生徒達はこらえきれずに笑いだした。前方に陣取っていた男女のグループが、「賢者せんせー」とライフガントルを冷やかした。それに彼は笑顔でこたえ、手なんて振っている。
(((……さすがおじいちゃん)))
 ほぼ同時に三人は口の中で呟いた。内心そう思ったことは今のところ彼らだけの秘密だ。


 ジュノン達の紹介も無事終わり、ピエロの司会進行でパーティは始まった。といっても、立食形式のパーティだから、談笑しながら軽く何か食べて、気が向いたら会場の真ん中でテンポの良い踊りをでたらめに踊るくらい。すでに仮装しているシャーレと、ステージから下りてすぐに生徒に囲まれてしまったライフガントルを置いて、ジュノンとロニテスは待っていてくれたフィリアンに連れられてどこかへ向かっていた。
「フィン、どこいくの?」
「ちょっと」
 フィリアンはニコニコ笑いながら、逃げられないようにロニテスとジュノン両者の片手を握っている。なんとなく嫌な予感がして、ジュノンは思わずロニテスを見た。
「……逃げたい」
 ロニテスもまた“嫌な予感”と言うのを感じているらしく、彼はジュノンにわかるようにだけ、そう呟いた。
「逃げないでねー」
 しかしその一言をフィリアンは聞き逃していなかった。彼はとうとうくすくす声に出して笑いながら、講堂のバックヤードである控室に二人を押し込んだ。ご丁寧に鍵までかけて、そっち見て、と言って壁側を指差す。
「……もしかしなくても」
「これ着るのか……」
 壁にかかっていたのは、おそらく二人の分なのであろう仮装用の衣装だった。故意になのかたまたまなのか、かかっている服の一方が明らかに女物である。スカートでないだけましか、なんて思いながら、ジュノンはこっそりロニテスを覗き見た。
「……ジュノン、悪い」
 彼は目を合わせようとしなかった。
 そんなわけで、「じゃあ外で待ってるね」と、早々部屋を出てしまったフィリアンに入り口を監視されながら、しぶしぶ二人は仮装することになった。
 当然の如く、ジュノンは女物だろう衣装を着る羽目になり、重いため息をついた。正直、そこそこ複雑な作りの衣装の着方をばっちり理解している自分が情けない。
「まあ、ホラ、考えても見ろよ。お前がそれ着ても似合うだけで済むけど、俺がそれ着たら似合わないどころか気持ち悪いで終わるぞ?」
 服も似合うやつに来てもらった方がいいって。
 ロニテスの言い分だった。そう言うロニテスは、ひょいと動物の耳がついたカチューシャを頭に乗せる。
 ……ロニテスの格好はおとぎ話に出てきそうな化け猫の姿だった。濃い紫と薄い紫のボーダーが印象的なタートルネックのセーターを着て、むき出しの腕の片方に紫の布を巻きつける。両手首にはもこもことした毛糸のリストバンドがあって、こちらも紫系統の配色だった。ズボンだけが真っ黒で、どうやってつけているのか、お尻のあたりからセーターと同じ配色ボーダーの尻尾が伸びている。しかもこの尻尾、どうやらロニテスの意識で動かせるらしく、今はゆらゆら揺れていた。
「……魔術ってすごいね」
「ああ、魔術ってすごいな」
 二人はひとしきり尻尾を見てそう言いあった。
 ロニテスとは違って、ジュノンは一見普通の衣装だった。しかしその衣装はおそらく「もともと男がやるようなキャラクター」を「女性が男装する」ために作られたものなのだろう、作りがいちいち可愛らしい。
 ロニテスの衣装が紫を基調としているのと同じように、ジュノンの衣装は濃紺を基調としていた。一見普通の礼服なのだが、中に着るワイシャツはワイシャツではなく“ブラウス”だし、胸元やそで口にやたらめったらフリルがあしらえてある。ブレザーと同色のズボンも長ズボンではなく半ズボンで、ひざ下ほどまであるブーツは完全に女性用だった。最後の仕上げと言わんばかりに、少し薄い紺の帽子をちょこんと頭に乗せれば、性別と一緒に年齢までおもわしくない方に違って見えた。
「あーなんていうか、普通に似合って普通にかわいいな、お前」
 鏡を見て深いため息をついたジュノンに、追い打ちをかけるように真顔でロニテスがいった。彼の真顔がその言葉に裏がないことを示しているようで、がっくりと落胆する。
(自分の女顔具合が恨めしい……)
 何でもっと男前に生まれなかったんだろう、ぼんやりと思いながら、ふと、自分の父はどうだったのだろうかと気になった。顔も知らない、自分が生まれる前に死んでしまった父。彼も自分と同じような状況に陥ったら、自分と同じようにこの衣装を着ただろうか。
(まあ、それを知る前にさっさと元の世界に帰れるようにならなくちゃいけないんだけど)
 それでも、このところ色々な事がありすぎた。
 たまにはゆっくりパーティなんてものを楽しむのもいいかもしれない、と、ジュノンとロニテスは控室の扉を開けた。


 散々フィリアンにからかわれながら(ジュノンのことを可愛い、可愛い、と、十回以上は言っていた)会場に戻ると、先ほどまではいなかったレナードとクレイらしき影が三人を待っていた。“らしき影”というのは、クレイが最初に見た時につけていた例の怪しげなマスクをかぶっていて顔を判別できないのと、レナードはレナードでクレイの背に隠れるようにして立っており、服の裾やら手足やらが何とか見えるくらいだったからだ。
「レナ!」
 彼らの姿を見つけるや否や、フィリアンは嬉しそうにそう声をかけた。その声に、クレイの後ろにいた影がびくりと震えたのがわかる。怪しいマスクがゆっくりとこちらを向いて、小さくうなずいたのがわかった。
「……誰かと思った」
 二人の元にたどりつくと、まず、クレイがジュノンに向かってそう言った。え? と問いかけの意味を込めて見返すと、彼は無表情(マスクで顔が見えないからだが、マスクを取ってもそうだっただろう)のまま、
「あんまり……可愛かったから……」
 ぼそりと言われた言葉に思わず固まった。まだ二言三言しか言葉を交わしたことのないクレイだが、彼がいい意味でも悪い意味でもとても真面目であろうことは見ただけでわかっていた。彼が純粋に褒め言葉として「可愛い」と言う言葉を使ったことに思い至って、ジュノンは何とも言えない気持ちになる。
 褒めようと思ってくれる気持ちは嬉しいが、言葉が言葉なだけに素直に喜べない。
「……褒め言葉として受け取っておくよ」
 結局曖昧に笑いながらそれだけ言って、ジュノンは視線を彼の後ろにずらした。
「……って、レナードかっわい―!!」
「おおお、お前にだけは言われたくないっ!!」
 そして思わずついて出た言葉に、顔を真っ赤にしたレナードが即座に突っ込んだ。
 レナードは、ロニテスと同じシリーズの仮装なのだろうか、こちらもおとぎ話に出てきそうな、ウサギの仮装だった。金髪から伸びる真っ白でほわほわしたウサギ耳が可愛らしい。彼は控えめにフリルのついたシャツ(こちらは“ブラウス”ではなかった)の上から薄い茶色のチョッキを着て、濃い茶色のもこもこしたショートパンツをはいている。裾から延びる足は真っ白で、すぐに白タイツを履かされているのだとわかった。足もとの靴はパンツや耳と同じようなもこもこした素材で足首を囲んでおり、全体的にぬいぐるみのような印象を受ける。もこもこパンツのおしりにちょこんとついた白く丸い尻尾が可愛らしい。彼はまた鎖で繋がった懐中時計をぶら下げていて、金の細い鎖の繋がった肩眼鏡をかけていた。
 彼の姿を見たフィリアンが、ジュノンの後ろでああ、なるほど、と呟いた。何がどう「なるほど」なのかわからず、思わず彼の方を向く。
「ロニーとあわせて不思議の国のアリスかな?」
 ジュノンの視線に気づいてか、それともジュノンと一緒に向けられたレナードの視線に気づいてか、フィリアンは微笑みながら言った。
「不思議の国のアリス?」
「うん、有名な絵本なんだ。アリスという女の子が、時計を持って“急がなきゃ、急がなきゃ”としゃべりながら走っていく白ウサギを見かけて、追いかけていく、って言う話。レナードはその白ウサギだね」
 言うと、レナードはその可愛らしい容姿に似合わずぶすっとした表情で、「だからなんだ」と低い声で呟いた。
「大体俺はもともとヴァンパイアの格好をしようとしていたのに! ネルの奴が勝手に衣装をすり替えてたんだ。信じられるか!?」
 レナードが進んでこういった格好をするとは思っていなかったフィリアンは、彼の憤慨した様子に「そう言うことか」と納得する。ネルは見ればわかるとおりお調子者だから、レナードにはただのヴァンパイアよりこちらのほうが楽しくなるとでも思ったのだろう。
「えと、じゃあ、俺は?」
 三人の会話を一歩下がったところでぼんやり聞いていたロニテスは、フィリアンの「不思議の国のアリス」に興味を持ったのか、ひと段落ついたところで声を出した。レナードはちらりとロニテスを見ると、その恰好がさもうらやましいかのように、
「ふん、お前は十中八九チェシャ猫だろ」
「「ちぇしゃねこ?」」
 ロニテスとジュノンが同じように頭上にクエスチョンマークを浮かべて聞き返すと、フィリアンがそうだね、と一言置いてから説明を始めた。
「アリスはね、白ウサギを追いかけたから不思議な世界に迷い込んでしまうんだ。その不思議な世界で、様々な不思議なキャラクターに出会うんだけど、チェシャ猫もその一つ。チェシャ猫は、アリスが森の中で道に迷い、途方に暮れてしまったところに現れるんだ。なかなか不思議な役どころ、かな?」
 だよね、と同意を求めるフィリアンにレナードも頷く。
「ああ、そんなところだろ。もっとも、“不思議の国のアリス”自体が結構不思議な物語だからな。結末も“全部夢の中のお話でした”だし。でも、今でも小さい子供に読ませている代表的な絵本だぞ」
 二人の言葉にジュノンとロニテスは口をそろえて「おもしろそう」と言った。サークラスにももしかすると「不思議の国のアリス」と同じような絵本や物語が存在するのかもしれないが、あいにくとジュノンもロニテスも孤児である。絵本を読んでほしい年齢の時に絵本を読んでくれるような人はいなかったし、そう言ったものがある、と言う存在すらそう言った年齢を通り過ぎたころに認識したぐらいだ。二人とも家族と呼べる愛すべき存在はいたが、ジュノンの家族(養父のミドラだ)は絵本を読む柄ではなかったし、ロニテスの家族の元にロニテスが転がり込んだとき、絵本を読むなんて悠長なことを言っていられる状況ではなかった。
 だからか、二人ともそうした物語を聞くのはとても不思議な心地がしていた。それからふと、ジュノンは自分の衣装を思い出す。
「ねえ、フィン? 聞くと皆モチーフがあるみたいなんだけど、僕の衣装はどんなモチーフなの?」
 こんなびらびらした衣装なのだから、何のモチーフもない、と言うことはないだろう。そもそもそれだと仮装にならない、そういう意味を込めてフィリアンを見ると、フィリアンは笑って「あるよ」と答えた。
「ジュノンのは多分、ヘンゼルとグレーテルのヘンゼルだろうね」
「へんぜるとぐれえてる」
 再び出てきた物語のタイトルらしいそれを、ジュノンは先ほどと同じように繰り返しつぶやいた。
「うん、ヘンゼルとグレーテルは仲の良い兄妹なんだ。彼らは、家が貧しいから、意地悪なお母さんに森の中へ捨てられてしまうんだ」
 そうして飛び出してきた言葉に、ジュノンはぎょっとした。いくら物語とはいえ、自分の子供を捨ててしまうなんて。言おうと思って、けれどその境遇がどこか自分と似ている気もして、ジュノンは複雑な気持ちになった。
「一度目は、ヘンゼルが家の前の白い砂利をたくさん持って行って、家からの道筋に一つ一つ落としていったから、夜になって彼らはそのあとを辿って帰ることができたんだ。だけど二度目は、急なことだったから、砂利を用意することができなくて、ヘンゼルは“お昼の分”と言って渡されたパンをちぎって砂利の代わりにする。だけどそれは、小鳥たちが食べてしまって、彼らが帰るころにはなくなってしまったんだ。二人は家に戻る道を探して森の中をさまようのだけど、やがてお菓子の家にたどりつくんだ。だけどそのお菓子の家は実は悪い魔女の家で、二人はとらえられてしまう。魔女はグレーテルを召使としてこき使い、ヘンゼルは食べるために牢屋に入れて肥え太らせようとした。やがて行く月が経った頃、魔女がそろそろいいだろうとヘンゼルを食べようとした時、グレーテルが機転を利かせて魔女を殺すんだ。それで、二人は魔女の家から宝石やらを持って逃げることができて、今度は運良く自分たちの家へ戻る道も見つけることができて、最後はちゃんと家に帰って家族と仲良く暮らすんだよ」
 長いフィリアンの説明を終えて、ジュノンはほお、と息をついた。お菓子の家なんてメルヘンだな、なんて思いながら、ふと気になったので声を上げる。
「あれ、でも、お母さんは意地悪なんでしょう?」
「ああ、お母さんはね、大体どの物語でも、ヘンゼル達が帰ってくる頃には死んでしまっていていないんだ。たまに、魔女が実は意地悪なお母さんだった、って言う本とかもあるよ」
 解釈が様々なんだ、付け足された言葉に声も出ない。よくよく考えなくても、これは、なかなかに残酷な物語ではないだろうか。
「……って、ちょっと待って。僕の衣装がヘンゼルなら、なんで女物なのさ!? 普通にヘンゼルの衣装を用意すればよかったじゃない!」
 大体貧しい家の子なのになんでこんなに豪華な装飾なわけ、とさらに声を高めると、ふん、と鼻で笑う声がしてレナードがにやりと笑った。その顔が実に愉快そうで、一瞬ほほの筋肉がひきつる。
「馬鹿だな、原作に忠実に衣装を作ったところでパーティになんの面白みもないだろう。お前のそれが女物なのは、お前には男物のヘンゼルより女物のヘンゼルの方が似合うからに決まってるだろ。というか、そうでないと困る。これでもしお前まで男物のヘンゼルだったら、俺は衣装を決めた役員に抗議に行っているところだ」
 息まいて言うレナードにジュノンは一瞬気押されたが、その瞳に自分と同じものを見つけると、すぐに彼の肩をがしりとつかみ、
「……わかる……わかるよその気持ち!!」
「やはりか! お前なら俺の気持ちを分かってくれると思っていたぞ!」
 そうして意気投合した。
 なんとなく遠い目で明後日の方向を見ながら語り出したレナードとジュノンを見て、残った三人は何とも言えない気持ちになるのだった。


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