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貴方のために作った部屋

「ここは…」
思わず呟いた。
音もなく滑り終えたケージは、そこが暖かな光に包まれた「地下屋敷」だということに気がついた。
ケージがいる部屋は何もないホール上になっているが、円形のその部屋は壁に数個の扉が備え付けられており、天井には豪華なシャンデリアが揺らめいていた。
扉が対象となるように、真正面にはさらに下へと下がる階段がある。
「気に入っていただけましたか」
不意に後ろから声が聞こえ、座り込んでいたケージはあわてて立ち上がった。
「特別に作らせた地下屋敷です。泊り込みの仕事があった場合にも対応できるよう、幾つも客間を作らせたんです」
微笑みながらいうルーナは、ケージの上着に埃を見つけてそっと掃う。
「!?」
予想外の行動にケージは一瞬たじろいだが、ルーナが意外にも少し悲しそうな顔をしたのであわてて習った。
「新顔の私を警戒しているのは分かりますが、もう少し…心を許してくれても…」
悲しみと同時に落ち込みを見せたルーナは、やるせない笑顔でケージに向き直る。
「全部屋を案内しましょう。もっとも、昨日できたばかりなので私も入るのは初めてですけれどね」
小さな紙切れを取り出しながら微笑むルーナに、先ほどまでのやるせなさは消え失せていた。


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 そこはまさに地下屋敷というべきところだった。
一体いつから作り始めていたのだろうと疑いたくなるほど広大な屋敷だった。
ルーナは嬉しそうにこう説明した。
「この屋敷は先代帝王の時代に作られてたものだそうです。留学帰還を終える前に、下見として部屋を見に来たときですね。偶然ここを発見して、信頼できる部下にその改築と修理を頼んだんです」
ケージが聞き流しているにもかかわらず、ルーナはなおも続けた。
「総部屋数は数えたところ百を越えていました。城のほぼ半分の土地を使っているそうですよ。私は第四地域国の郊外の屋敷に住んでいましたから…ここまで広い地下屋敷は初めてで、今感動しているんです」
そういうとルーナは照れたように笑った。
ケージが適当に相槌していることを彼は知っているだろうか。
遊園地に来た子供のようにはしゃぐ彼を前に、ケージは静かに屋敷の内部を観察していた。
(地上に出られるのは始めに来た入口だけか…抜け道もない。あるのは空気口くらいだ)
もしものときの敵襲に備えそんなことを考えていたケージだったが、次の瞬間、肩を何かに引っ張られた。
「あ、すみません!大丈夫ですかっ!?」
倒れ掛かったケージを支えたのは横にいたルーナだ。肩を寄せたことに対して謝っているようで、彼女にはそんな彼の顔がぼんやりと歪んで見えた。
「貴方のために作った部屋です。見てもらいたかったので…」
少しだけ照れたように笑いながら、ルーナは静かにケージを起こした。
細められた目の先を追うように、ケージは顔を上げる。
「わ……」
感情の差がないケージでさえ、思わず声を上げるほどの部屋。

そこはケージが今までいた牢獄のような部屋とは対照的に、広々とした色彩ある部屋だった。