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開けまいと堅く閉ざしていた記憶の扉

子供たちは黒い革生地で作られたチョーカーを首につけ、番号で呼ばれた。
そしてその番号はそのまま彼らの地位となる。

…地位の高いものほど、美しく。
…地位の高いものほど、逞しく。
…地位の高いものほど、番号は0へと近づいていった。

人間も十数年前に国に売られた『子供』だった。
人間の母親はひどい病で、そして人間の父親は人間に虐待を与え続けていた。
人間の父親は、人間に向かってある時いったのだ。

「お前の大好きな母さんを助けるために、城へ行ってくれないか」

と。
彼はこういえば人間が従うと分かっていたのだ。無駄な労力は必要ない。
その一言で、彼は大金を手にし、病でぼろぼろになった妻を捨て、新しい優雅な人生を別な国で過ごせるのだ。
人間は承諾した。それは、人間がわずか七歳の時だった。
人間は、女だった。
とても美しい女だったのだが、彼女は類まれなる武術の才を持っていた。
…彼女は、例外として帝王の玩具となり弄ばれないのと引き換えに、常に死と隣り合わせの生活を強いられるようになったのだ。

 薄暗い廊下はどこまでも続いていた。
…一層のこと、この廊下がずっと続いていればいい…彼女は、「D−00」と呼ばれた女は、響き渡る自分の靴の音を聴きながらそう思った。
ここは息苦しい。
全てが押し込められているようで、全てが放たれているようで。 廊下は、城へと続く地下通路だった。
ところどころに死体が見えるのは、ここが今もなお死体処理場としても使われているため。
上のお偉いさん方から見れば、「使い終わった愚民どもなどぽい」なのだろう。
そうした「捨てた人間」の身勝手さ、わがままさ、同じ人を人とも思わない非道さと、「捨てられた人間」の恨み辛み、生きていたいという欲望がこの廊下には溢れかえっているのだ。
彼女はそういうわけで、地下通路が大嫌いだった。
たいまつの火が揺れる。
一人でここを通るのは何時ぶりだろうか、彼女はふと思う。
いつもなら彼女の部下(同じ「子供」の出身もいれば、一定年齢に達し強制的に兵役義務をつけられたもの。全員庶民出身に変わりは無いが)らが何とか彼女を励まそうと、歌を歌ったり雑談をしたり、賑やかな雰囲気を作ってくれていた。
それが今日はない。
呼ばれたのは自分だけ。自分だけということは、自分にしか出来ない何か特別な任務。
彼女は小さくため息をついた。
首に当てられたチョーカーがひりひりと痛い。まるで彼女の孤独を膨張させるように。
(以前にも…似たようなことがあった)
彼女はぼんやりと思う。
揺れるたいまつの火が彼女を慰めた気がした。
(あれは…そう、まだ私が幼かったころだ…)
遠くのほうで何かが消えた。
壁につけられていた蝋燭が切れたのだろう。…暗闇が増す。


彼女は、開けまいと堅く閉ざしていた記憶の扉を、至極ゆっくりとした動作で開き始めた。