そしてくるくると転がっていった。
「聞いた?」
「何、なんかあったっけ」
「堂本さん、交通事故にあってそのまま死んじゃったって」
「あー、その話。私さ、実はその事故間近で見てたんだよね」
「間近って…そう言えば理沙、事故があった一昨日部活出なかったよね」
「うん。バイトの面接でさー。あ、冬からバイトやるんだ私」
「そか。……それで?事故どんな感じだった?」
「うん…あのさ、四丁目のカラオケの隣に大きなビル建ってるの知ってる?」
「知ってる知ってる。つい最近まで工事中だった所でしょ」
「そう。その角を曲がってちょっといった所に横断歩道があるんだけど、返りにたまたまそこ通ったんだよね」
「うんうん、それで?」
「で、結構人が込んでてさ…。その中に堂本さんがいたんだよ」
「声かけなかったん?」
「かけようか迷ったけど止めた。だってそんなに仲良くないし。堂本さん、丁度信号変わって渡る所だったし……」
「で、そのあと轢かれちゃったんだ?」
「うん。信号が青になって、堂本さんを入れた十人くらいが渡り始めたんだよ。そしたらバイクが突然突っ込んで来て、でもそれはみんな無傷だったんだ」
「え、無傷だったん?」
「なんかバイクさばきがすごかった。結構人まばらだったから、出来た合間をすいすい〜って」
「へぇ〜!なんかすごっ」
「本当にすごかったよ。それでね、次にそのバイクを追うように車が突っ込んで来たんだ!ばああああん!!って」
「え、じゃぁ渡ってた人たちみんな重傷?」
「詳しくは分からないけど、多分。車がブレーキもしないでそのまま突っ走って、その中で堂本さんを轢いた。でさ、ここからが……ちょっと…」
「何?なんかあったの?」
「うん、いや……」
「大丈夫だよ、話して話して」
「……堂本さんが車のボンネットに叩き付けられて、フロントガラスがすごい勢いで割れたんだ。そのあとすごい勢いで後ろに吹っ飛ばされて、車が堂本さんの上を通った。それでタイヤが堂本さんの服に絡まって、車はスピン、なんとか暴走は止まったんだけど」
「え、じゃぁ周りもかなり危険だったんじゃない?」
「うん。私はビルの角の所で突っ立ってたから被害無かったけど、横断歩道近くにいた人は気づいたらみんな倒れてた。隣にいたおじさんが慌てて携帯で救急車と警察呼んでさ。周りにすごい血の臭いが立ちこめてさ……」
「…………」
「堂本さん、ぐちゃぐちゃだった。私目ぇ離せらんなくてさ、突っ立ってたんだ」
「……ねぇ」
「おじさんが大丈夫かって私の肩に手を乗せたらしいけど、全然気づかなかった。堂本さんの首がね、後ろ向いてた。背骨が変な方向に曲がってて、口から茶色いのがはみ出てて……みんな真っ赤だった」
「ねぇ!!」
「私とおじさんと、その後ろにだんだん人が集まって来て、しばらくしたらパトカーと救急車が来た。救急車、すごい数だったよ…。それで、真っ赤な人たちを次々と担架に乗せて運んでいった。もちろん堂本さんもだよ、でも隊員の人は堂本さん見てすぐにさ……」
「理沙、理沙ってばっ」
「こうやって………こうやってさ、両手あわせて目を閉じたんだよ……っ。真っ赤になってぐちゃぐちゃになった堂本さん見て、まるで死んじゃったみたいに手を合わせたんだよ…っ!」
「理沙!!」
「…………何?さやか」
「理沙、あんたなんかおかしいよ。事故間近で見てショックなのは分かるけどさ、しっかりしなよ、理沙!」
「大丈夫だよ、さやか」
「大丈夫って……」
「それでね、通報したおじさんと私、警察に色々聞かれたんだ。事故の様子とか。でも私は堂本さんのぐちゃぐちゃになった姿が脳裏に焼き付いてはなれなくて……」
「理沙………」
「………笑顔」
「え?」
「笑顔をね、隠すのに必死だったんだ、私。堂本さんの曲がった腕、飛び出した内蔵、剥き出しの目。なんかね……すごく、すごく良かった…」
「り、さ?」
「堂本さん、死んでないと良かったのに!あのぐちゃぐちゃになった体で、痛みをずっと感じ続けてれば良かったのに!他の人もみんな、意識なんて飛ばさないでずっと痛がってたら良かったのに!」
「理沙」
「ああ、ああ、飛ぶ血が見たい肉片が見たい内蔵が見たい苦痛にゆがめた顔が見たい…っ」
「理沙、あんたおかし……―――」
「でも私気づいたよ、さやか。欲しければ自分でやればいいんだよね、全部」
「……」
「さやか、さやかは私に特上の“苦痛”を見せてくれるよね?」
私の意識はくるくると。暗黒へ向かって。
“死”という暗黒へ向かって、ただひたすらに転がり続けていった。
そして“私”という世界は終わりを告げて、そして、
- end -
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ショート・ショートです。
今回は少し変わった二人の会話のみで構成してみました。
果たしてこれを“小説”と呼ぶのかどうか(またしても論点はそこ
理沙ちゃんはほぼ初めから「よし、この子は壊そう」って決めてたんで。
意外とすらすら書けました(そりゃ少ないしね)
ちなみに元ネタは交通事故に関するビデオでダミーが思い切りボンネットに叩き付けられていたことからです。
皆さんも交通事故には気をつけましょうねv
最後の繋はわざとです。続く訳ではないので悪しからず。
その言葉の続きは皆さんの心の中に。
Harasu Uun