「そーぉれっ」
地面を踏みつけて足を出す。着ていたジャージがこすれて、握った鉄棒が摩擦で赤くなるのが分かった。
「わ、惜しい!」
中途半端な所まで上がった両足は、押さえつけられた腹が鉄棒から離れるのと同じタイミングで地面へと吸い寄せられる。
また失敗。
「ねぇ優、もう一度お手本見せて」
何となくがっかりして、奇麗に編まれた三つ編みが少しぼさぼさになったのにも腹が立って、亜紀は傍らで眺めていた優に声をかけた。
優はニヤリと笑うと、亜紀が使う一番低い鉄棒の二つとなり、仲間が「大人達の鉄棒」と呼ぶ一番高い棒に手を掛けた。
「よっし、やるからには最高のものを見せてやるぞ、俺様は!!」
優はそう言ってニカ、と笑い、亜紀は思わず吹き出した。
自分の身長よりも高い棒に捕まったって、ぶら下がるだけで回れるわけがない。
亜紀はくすくす笑いを止めようと必死になりながら、まじめな顔つきで鉄棒を睨みつける優に言った。
「無理だよ、優、こっちので良いからさ。ほら」
しかし優は動こうとしない。亜紀の声すら聞こえていないようだった。
「大丈夫。大丈夫さ」
それは亜紀にはなった言葉なのか、それとも自分に向けた言葉なのか。
それすらも分からない曖昧な言葉は、亜紀の耳にぼんやりと届いて消え失せる。
亜紀は、こうなった優を止める術を自分が持たないことを、知っていた。
「行くぞっ!」
気合いを入れて一つ、大きく叫ぶ。
瞬間優の足は思い切り地面を踏みつけて、腕の筋肉がギシギシと音を鳴らしながら腹筋とともに優の体を支え、優の足は奇麗な弧を描きながら鉄棒に吸い寄せられた。
ぐるり
優の視界が一変して、空が足下に見えた。
目をまん丸くして自分を見上げる亜紀も、自分とは逆に立っていて、面白い。
(まわれた!)
嬉しくて嬉しくて、優は向こう側に見える自分のつま先を見つめながら微笑んだ。
ぐるり
半回転で体を戻して、足が静かに地面についた。
静寂。
後に、亜紀の叫び声。
「やった!やったね、優っ!優すごい!!大人の仲間入りだぁっ!」
そこまで言われたら逆に恥ずかしくなってしまうほど、亜紀は優に向かって嬉しそうに言った。
そんなに楽しく、嬉しいのか、亜紀の頬は少しだけ紅潮していた。
「大丈夫、だっただろ?」
回れたことへの達成感をしっかりと握りしめながら、優は亜紀に向かって微笑んだ。
亜紀も笑う。
そして彼女は、自分の使う低い鉄棒に向き直った。
「優が出来たんだから、私もこれくらい出来なきゃね」
優はゆっくりと頷いた。
「そうさ、亜紀ならきっと出来る」
その言葉に亜紀も頷いたのを優は見た。
夕日が影を伸ばしていく。
「そーぉれっ」
暖かな、放課後のグラウンド。
世界は亜紀を中心に、優を中心に、ぐるり、ぐるりと回っていく。
- end -
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ショート・ショートです。
最近ショートが好きなのか、そればっかり書いてます(爆
けれど良いスランプ脱出になりましたvやったね。
鉄棒。逆上がりできます?私鉄棒だけは得意なんですよねv
空中逆上がりも出来ます。
……そんな幼少時の思い出を思い出しつつ、出来ないこってどうしても出来ないんだよなぁとか思いつつ。
………あれ?私にしては珍しくほのぼの??
Harasu Uun