くずれる

くずれる
001-010









001流転

流れていった。
全てが消えていって、私も消えた。
流れていった。
だから、どうしたの??


ああ、そうだね。



あなただけは。
あなただけは。


全てが消えて逝く中、
にやりと不敵に笑って血を吐く。


ああ、雨さえもうっとうしいや。



存在しない存在に、当たらぬはずの雨を感じて。


あなただけは、
そこに居残る。

[ 流転 ]
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002はなびら

髪についてる。
とってあげようか。

ああ、でもその方が、君には似合っているよ。



落ちてきた。
拾ってあげようか。
そして、君にあげようか。


どうしてくれよう?
僕の夢を
全てを壊し。


どうしてくれようか?

いっそ、あの花びらのように


地に、堕としてくれようか。

[ はなびら ]
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003叫び声

聞こえていますか。
私の声が
聞こえていますか。
あなたの声が。


苦しいと、
苦しいと、
助けを呼ぶその叫び声が。


聞こえていますか。


全てのものが、
共通に抱える悲しみの声が。

[ 叫び声 ]
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004ごはん

お腹がすいた。
とてもとてもお腹がすいて、
ぐぅとなった。

お腹がすいた。
いつもいつもすいていて、
仕方がないから寝てしまう。


朝が来る。
昼が来る。
夜が来る。



だけど俺にはどれも等しく、
そして、うんざりだった。


ご飯が食べたい。
水が飲みたい。


それが無理なのなら、
だれか、だれか。


俺を、そのナイフで殺して下さい。

[ ごはん ]
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005言の葉

“好きだよ”


と、あなたが言う。
だけど、
それはただの言の葉でしかなくて。

愛情を、ただ単に音を変えただけで。

偽りかもしれないの。
偽物かもしれないの。

でも でも でも。

私も同じく、
言の葉を口にする。

[ 言の葉 ]
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006タルタルタルタ

携帯電話が鳴る
けたたましい音、うざったいバイブ音
どこにでもあるような待ち受けが
なんとなく憎たらしく思う

だから何かが変わるわけではないけれど
それでもあたしはそれを開く

携帯電話が鳴る
けたたましい音、うざったいバイブ音
どこにでもあるような待ち受けが
あたしを嘲笑したようで。



空に向かって放り投げた、声を出して笑おうか



タルタルタルタ、
タルタルタルタ。

[ タルタルタルタ ]
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007財布

ちゃりん ちゃりん
音が鳴る。
こすれる音、ファスナーの音。

ちゃりん ちゃりん
音を聞く。
何枚か中から 抜き出して。
差し出した手が 凍えて震えた。

当たり前のように聞いていた音が
気づけば止まっていたことに気づく。
心に穴が開いた気がして
無性におかしくて 笑った。 笑った。

[ 財布 ]
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008蛇口

太った自分の顔が見えて 酷く醜いと思った。
上を見れば元通り、舌を見れば太っちょさん。

ひねった口から水が出た。
流れっぱなしの エンドレス


鏡に映った自分の身体に惚れぼれとして、
顔を洗うのも忘れて立ち去った。

流れっぱなしの エンドレス
いつしか溢れて 消えて逝く。

[ 蛇口 ]
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009波紋

導かれた先はどこだったか
今はもう覚えていない
ただ広がる波紋だけを見つめていた
僕の世界


さあ行きましょう
声に出された音がいつまでも耳に残っていた
それは一つの記憶
僕がいない君の記憶


広がりゆくすべてを把握するなんてこと
僕には到底無理だから
僕はそれを眺めていた。ただ、そう、単純に。


水面に映る自分自身が揺らぐのを、ただ、無感情に眺めていた。

[ 波紋 ]
10/09/15/Harasu Uun

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010don't worry

声に出せば真実になると信じていた。
言霊は生きているから、言の葉は生きているから。
言葉にすれば真実になると信じていた。
あの頃はなんてやさしい日々だったのだろう。

思い出の華はもう枯れてしまった。
カラカラのドライフラワーにすらなりもせずに
美しい華ほど最期の姿は醜いもので
枝だけになった裸の華を、君が掬い取るのを眺めていた。

声に出せば真実になると信じていた。
だから僕に怖いものなんて何もなくて、
言葉にすれば真実になると信じていた。
あの優しかった日々に僕はもう戻れない。

君についた限りなくやさしい嘘は
どれもが僕にとって真実だった。
君がついた限りなくやさしい嘘も
また全てがぼくの真実だった。


それが嘘だと気付いたから、もうその魔法は期限切れ。
「心配しないで」魔法の呪文、
今の君は通じないんだと、僕はもう知っている。

[ don't worry ]
10/09/15/Harasu Uun

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