夢の中のぼく

夢の中のぼく
001-010









001茜月

茜色した月を見た。
君は笑って、
私は泣いた。


届かない。

触れない。


そうして今日も、茜月。

[ 茜月 ]
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002星

夜空に輝く、それは何?
君の見つめるその瞳から、
それが堕ちた気がした。
僕の心は光が満ちるほどに、
君が君であるように。


そう、僕は星なのだから。


地上にいる君を見つめて、
君は空を見上げて、


そうして、出会うことなく。

[ 星 ]
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003くもりぞら

はれ、雨、はれ、雨……

僕が好きなものは、
どんよりと、イヤなものを覆い隠す雲。
そして僕の涙を、
そっと優しくなでる雲。

はれ、雨、はれ、雨……

そしていつしか、曇り空。

[ くもりぞら ]
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004夢野原

夢を見ました。
とても、綺麗な夢でした。


夢の中で、私は笑っていました。
あなたを殺して、笑っていました。

血の海に沈められた貴方は、
私を見てにやりと笑って、

私はまた、あなたを刺しました。

夢を見ました。
とても、綺麗な夢でした。


紅に染められた、
あなたがとてもきれいでした。

[ 夢野原 ]
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005流蝶

蝶が飛んだ。
君の髪にとまって、
そして飛んだ。

流れるように、
舞うように、
きれいに飛んで逝く蝶の姿が 僕は。


どうしても君のような気がして、


その澄んだ瞳に見つめられたら、
何もかも、わかってしまうじゃないか。



蝶が飛んだ。
僕のてのひらにとまって、
そして死んだ。

[ 流蝶 ]
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006気まぐれ子猫

気まぐれな子猫は、
いつもどこかを散歩します。
大きな犬に出会っても、
やかましい人間に出会っても。
いつも、
勇気を持って乗り切ります。


気まぐれな子猫は、
今日もどこかを散歩しました。
それはとても良い天気の日で、
気まぐれな子猫は、
いつものように歩きました。


やがて歩き疲れて、
疲れ果てて、


目の前に現れた美しい湖に、
思わず飛び込みました。


きれいでした。


太陽の光があたって、
水面がきらきらと光っていました。


そんな、
きれいな水の中で子猫は死にました。


大きな湖の中に飲まれて、
やがて消えてなくなりました。


だから、
死んでしまったのです。

まるで まるで あなたの ように

[ 気まぐれ子猫 ]
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007風

ざわざわと 木々がなる。
怖いくらいに死んでいった人々を、
まるで吹き消すように。

その、
魂の 灯火を、

あなた自身で、吹き消すように。

ああ 風に揺られて。
ああ 血が、血が、流れていった。

[ 風 ]
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008一輪

焼け野原がありました。
草が燃え、灰になった野原がありました。


地が血を吸い、
人が人を殺して逝く。


焼け野原がありました。
草が燃え、灰になった野原がありました。




そして そこに一輪


隠れるように、小さな華がありました。

[ 一輪 ]
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009壊れ心

肉片が飛び散った、
あたしはただ笑うだけ。
肉片が飛び散った、
ヒトだったそれは笑うだけ。

あたしを見下ろしながら、
あたしを蔑みながら、

壊れた心は直せるのかな、
壊れた心は直せるのかな。

[ 壊れ心 ]
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010いまいっしゅん

声が枯れる。
紡がれる言葉、始まりの合図。
地面を蹴った。力が 入る。
ただ我武者羅に 走る 走る。

どうしてこんなことをしているんだとか、
そんな理由は必要なかった。
ただ走っている。
ただ走っている。
地面を蹴りつけるその瞬間が たまらなく愛おしくて。

目の前の世界が変わった。
強く、強く 地面を蹴りつけた。

いま、いっしゅん。

反転した世界の後、 暗転、暗転。
怖くない、怖くない。


耳に届いたのは聞きなれた音。
終わりの合図。


だからほら、いまいっしゅん

[ いまいっしゅん ]
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